子どもが脳震盪!1週間後の試合に出場できる? -脳震盪の対応とスポーツ復帰-

「試合中に選手が頭を強く打ってしまった」

そんな時どうしますか?
脳震盪は命にも関わるとても怖い怪我です。
そんな時に指導者はどんなことに注意してどんな行動をすればいいかをご紹介します。

1.脳震盪とは?

 脳震盪は、頭部へ直接的あるいは間接的に衝撃が加わることで起きる、脳の一過性の機能障害とされています。表1に示したものが主な症状です。

一時的な意識消失や記憶障害は必ず起こるわけではなく、意識・記憶が通常だとしても脳震盪が起きている可能性は否定できません。

2. 脳震盪の判断

 疑わしいシチュエーションに遭遇した場合、それが脳震盪である可能性があるかどうか、現場レベルで評価しなければなりません。

「あの子頭を打ったみたいだね。でも意識はあるし自分で立ち上がった。自分でも大丈夫と言っているし、問題ないだろう。」

とはいきません。

この時に用いられる評価法として、代表的なものに、SCAT(現在SCAT2とSCAT3が一般的に用いられている。12歳以下を対象としたChild SCAT3も。)があります。
しかし、これは、医療従事者を対象として作成されていることから、評価が複雑で難しいという難点があります。そのため、育成年代のコーチや保護者の方が現場で素早く脳震盪の評価をしなければならない場合には、よりシンプルなPocket SCAT2(https://www.rugby-japan.jp/about/committee/safe/concussion2012/guideline/Pocket_SCAT)
もしくは、日本スポーツ医学会が作成したスポーツ現場における脳震盪の評価(http://www.jfa.jp/football_family/pdf/medical/b08_01.pdf:Pocket SCAT2をさらにわかりやすく簡易化して作成した評価シート)を活用してはいかがでしょうか。

これは、脳震盪の評価を

⑴ 自覚症状(めまい、頭痛、ぼやけて見える、など) 
⑵ 記憶(日時や場所など、簡単な質問をし、適切に答えられるか)
⑶ バランステスト(片足立ちで行うバランステストが可能か)

の3項目から行う評価シートです。どれか一つの項目でも当てはまるものがあれば、「脳震盪の疑いがある」として運動を中止します。原則、子どもの場合、可能な限りすぐに医療機関を受診してください。また、最低でも24時間は子どもを一人にしないこと、運動はもちろん認知活動(テレビ、スマートフォン、勉強など)も控える必要があります。
このシートは、JFA(日本サッカー協会)のHPでも配布されているので、ぜひスマートフォンなどに保存していつでも見られるように活用していただきたいです。

3. 脳震盪からスポーツへ復帰するときに

スポーツへの復帰に関してですが、JFA(日本サッカー協会)をはじめ多くの競技団体では、以下のような段階的プログラムを提示しています。医師の診断に基づき、ステージ毎に最低24時間を費やして進めていきます。異常がなければ次のステージへ、もしも脳震盪関連の症状が発生した場合は、24時間の休息をとったのちに、一つ前のステージから再開することになります。これは、

GRTP : Graduated Return To Play

(段階的競技復帰)と呼ばれます(表2, 3)。

GRTPが示すように、例えば脳震盪の翌日に、

「もう頭痛も吐き気もなくなった。体の調子もよくなったので、練習に参加したい。」

と言われたとしても、コーチはそれを許可してはいけません。何故なら、短期間での二度目の脳震盪は一度目より小さな衝撃であっても発生しやすく、さらにその場合、セカンドインパクト症候群に代表される重篤な問題へとつながる可能性が高いからです。それを防ぐためにも、十分な回復期間を経て段階的にスポーツへ復帰することが原則となります。
 「体の調子がいい」というのは復帰段階における前提条件(ステージ1)です。そこから初めて段階的に復帰していくのだ、ということをコーチ、保護者、そしてもちろん本人も理解しなくてはいけないでしょう。

4. 子どもの脳震盪は3週間?

さて、上記のGRTPでは、脳震盪の発生から最短で6日間で復帰することが可能とされています。しかし、これは、医師によってGRTPが管理された成人を対象としたものです。脳震盪は、成人のそれよりも重篤化しやすく、治癒までに時間がかかります。そのため、子どもの場合、より長期の休養期間を経て、スポーツへ復帰することが求められます。
例えば、脳震盪が好発スポーツであるラグビーでは、子ども(15歳以下)の脳震盪に対して、より慎重に対応するよう求めています。日本ラグビーフットボール協会は、15歳以下の脳震盪に対しては、最低14日間の休養期間(ステージ1)の後、ステージ2~5を各ステージ48時間ずつ費やすこと、としています。つまり完全にスポーツに復帰するまでに

最短で23日間かける必要があるということです

(表4)。注意しなければならないのは、子供の場合、日中は学校に通うということです。体育の授業もありますし、休み時間には校庭で遊びたがるかもしれません。家庭とチームだけでなく、学校との連携も必要となってくるでしょう。

5. 最後に

脳震盪に関して、世界的に関心が高まってはいますが、それが一般の方にまで浸透しているとはいえません。その中で子どもの人生に関わる者として、「あの子は頭を打ったけど少し休めば大丈夫」ではなく、慎重かつ適切な対応をとる必要があります。

脳震盪に大げさすぎるということはないということを忘れてはいけません。

【参考文献】
・Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National athletic trainers’ association position statement: management of sport concussion. Journal of Athletic Training 49(2), 245-265, 2014. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.
・McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. British Journal of Sports Medicine 47(5), 250-258, 2013. doi:10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
・日本脳神経外傷学会 日本臨床スポーツ医学会.スポーツ競技における脳震盪の評価.(http://www.jfa.jp/football_family/pdf/medical/b08_01.pdf 2017年5月時点)
・日本サッカー協会.サッカーにおける脳震盪に対する指針[メディカル関係者向け情報].(http://www.jfa.jp/football_family/medical/b08.html 2017年5月時点)
・山田 陸雄ほか.ラグビー「ミニラグビー、ジュニアラグビー、およびユース年代のラグビーにおけるスポーツ復帰とその予防について」.ジュニアアスリートをサポートするスポーツ医科学ガイドブック(金岡 恒治,赤坂 清和 編),214-235,メジカルビュー社,2015.

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