皆さんが子供の頃、ウォーミングアップと言えば、ジョギングをして、みんなでストレッチをして、中高生であればダッシュを何本かするというのが当たり前ではなかったでしょうか?
しかし、近年ではそういったウォーミングアップメニューは非効率だと言われるようになってきました。
実際にオーストラリアサッカー協会では、ウォーミングアップという項目は練習の中になく、パス練習の中にウォーミングアップの要素を加えるという考え方をしています。
そこで、今回は改めてサッカーにおけるウォーミングアップメニューの在り方について考えてみたいと思います。
サッカーの練習におけるウォーミングアップメニューの目的
そもそも何故ウォーミングアップが必要なのでしょう。
それは、「怪我の予防」と「練習効果の最大化」のためです。
もっとわかりやすく、シンプルに言えば、メイン練習のための「準備」です。
では、どういった準備が必要なのか、より具体的に考えてみましょう。
ウォーミングアップを考える際には、以下の3つの観点から考える必要があります。
身体的準備
技術的準備
精神的準備
「身体的準備」
練習前は、身体が十分に温まっていないため、筋肉も硬く、心拍数も低いままです。
その状態で激しい運動を始めてしまうと、身体が準備できていないため、怪我につながってしまいます。それを防ぐために、激しい強度が求められるサッカーの動きに耐えられるよう、少しずつ心拍数を上げ、適度に筋肉をほぐす必要があります。
「技術的準備」
ホリスティックアプローチとよばれる、より現実的なシチュエーションで練習することが求められる現代のトレーニングでは、常に状況判断や対人プレーが求められ、個人技術に集中する時間はありません。それでも個人技術が重要なことは言うまでもありません。
そのため、その日の練習テーマを達成するために必要となる個人技術を磨くことも、ウォーミングアップでは大事です。
「心理的準備」
サッカーは知能的でもあると同時に荒々しいスポーツです。試合になれば誰もが興奮し、熱くなるのがサッカーです。
そして、練習というのは試合の状況とできる限り同じにしなければ非効率と言われています。
ということは、練習においても試合と同じような精神的な激しさが求められます。
練習が始まる前は選手にそれぞれの生活がありますが、練習が始まれば「サッカー選手」になる必要があります。
コーチはよく「切り替えよう」という言葉を使いますが、残念ながら人間の脳はそう簡単に切り替えられません。
だからこそ、ウォーミングアップの時間を使って、気持ちを「サッカー選手」モードにしっかりと切り替えなければいけません。
また、その日の練習テーマを意識させることも心理的準備という観点では必要になります。
ウォーミングアップメニューに必要な要素
身体的・技術的・精神的準備をするためにウォーミングアップの中に求められる要素は、以下の3点になります。
適度な身体的負荷
動的トレッチ
練習テーマに関連したサッカースキル
「適度な身体的負荷」
怪我予防のためにも心拍数をあげ、身体を温め筋肉を柔らかく必要があります。そのためにはゆっくりとしたランニングから少しずつ強度を上げていき、最終的にはスプリントができる状態まで持っていく必要があります。
「動的ストレッチ」
強度の高い練習に耐えられるように筋肉を「適度に」柔らかくする必要があります。ここでポイントとなるのは「適度な」柔軟性です。特定の部位を10秒ほどかけて伸ばすストレッチ(静的ストレッチ)では、柔軟性は上がるのですが強度の高い運動をするには柔らかくなり過ぎてしまい、怪我を招く危険性があります。
そのため、現代のトレーニング理論においては。ウォーミングアップでは静的ストレッチではなく、動的ストレッチが必要であると言われています。動的ストレッチというのは、いわゆるブラジル体操のように身体を動かしながら各部位を伸ばしていくストレッチになります。
「練習テーマに関連したサッカースキル」
練習テーマを達成するために必要な基礎技術を向上する必要があります。
そのためには、外的プレッシャーの少ないシチュエーションで、反復して練習ができることがポイントになります。とは言っても、最低限の状況判断は、以前紹介したPDE(認識・判断・実行)の観点からも重要になります。
技術的要素というのは、ボールテクニックだけではなく、練習テーマが「前線からのプレッシング」であれば、プレッシングの動作、タイミングなどもサッカーの技術的要素とも言えるでしょう。
そして、なぜそのスキルの練習をしているのかを選手に意識させることにより、心理的な準備にも繋がります。
コーチの発想力が求められるウォーミングアップメニュー
ウォーミングアップメニューを考える上で、以上の3要素が必要となります。そして、その3つをいかに短時間で効率的に実行するのか、というのがウォーミングアップメニューを考える際のポイントになります。
そのためには、ジョギングの代わりに、ポジションチェンジを含んだパス練習から練習を始め、身体が温まってきたところで動的ストレッチをし、さらに強度の高い動作を含んだパス練習をするというのが基本的なウォーミングアップの流れになります。
パス練習の内容は、その日の練習テーマに必要なスキルが含まれており、強度がコントロールされていることがポイントです。
ウォーミングアップメニューは制約が多い分、コーチの発想力が重要になります。そのアイデアを得るためにもシェアトレなど他のコーチのアイデアを吸収し、活用することが大事になると思います。


