トレーニングに入る前にみなさんはどのような準備をしているでしょうか?そしてその準備はいつ始めるでしょうか? 今回はトレーニングの準備の始まりから仕上げまでについてスペインバスク地方にてアスカルチャFTのU19とU11の監督を務める岡崎篤さんに語っていただきました。
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トレーニングの準備の始まり
週のトレーニングの始まりはその前の週の試合直後に訪れます。
試合直後というのは子ども達が一番自分自身の課題について一生懸命向き合おうとする姿勢が強い瞬間でもあります。鉄は熱いウチに叩けとはこのことでしょう。
試合後、子ども達にはコーチの専門性がしっかり寄り添った考察を家に持って帰ってもらいたいものです。試合後全体でのミーティングを行うのもいいでしょう。
しかしあくまで大事なのは個人的に選手各々と話をし、その中で本人がどんな風に試合を行ったのかを指導者が知ること。
その子どもが向き合うべき課題が明確な場合は質問をしたらいいでしょう。具体的な状況を提示してそこでなぜうまく行かなかったのか、どんな道具の習得が必要なのか?答えは求めず週末ゆっくり考えておいでと言ってもいいと思います。できるだけ全ての選手のこの時間を設けたいものです。
我々指導者にも同じことが言えます。試合の中で出た各個人の細かな課題については(僕の場合は)このタイミングを逃せば翌週にはその半分以上は忘れてしまいます。
忘れてしまった状態で迎えた翌週のトレーニングを構築しようとすると大抵質の低いものになってしまいます。できるだけこのタイミングで整理をしたいものです。
アシスタントコーチと各選手について話をすることも凄く大切です。できるだけ多くの意見があれば良いと思います。誰が良かったか、何が良かったのか。そして今後取り組むべき課題について自分一人ではが見えなかったことが見えてきます。
トレーニングの準備の仕上げ
週が明け、1回目のトレーニング。ここでは皆で練習前にミーティングを行います。
主に選手達の発言によってミーティング自体は進んでいくわけですが、指導者である自分が司会者になることが重要です。
初めは考察の必要のない簡単な質問からミーティングをスタートすることが多いです。色々なことを思い出させる為ですね。どんな相手と戦ったのか。スコアはどんな風に動いたのか。どのポジションで出たのか。天気やピッチはどうだったのか。試合時刻etc。
その前には前週はどんなことに取り組んできたのかについて、ここは質問せずにミーティングの導入として僕が話し始めることが多いです。各自の良かった部分についてその理由も含め僕の感想を伝えます。この辺から子ども達全体の集中力が上がっていくのを感じます。
そして話は試合での各々の出来について進んで行きます。半数くらいの選手は試合直後に自分と話をしたテーマを思い出してそれを発言してきます。
中にはそこから考察を深めた発言をしてくる選手がいるのですぐさま褒めることができるよう準備していなければいけません。
この瞬間、誰がトレーニングの準備ができているのか、もしくは誰が自分自身の成長に興味を持っているかわかる瞬間でもあります。当たり前のことですがここで大事なことは前持って指導者自身が週末の出来事についておさらいしておくことです。
そうでなければこのミーティングの良い司会ができません。例えば、試合のことを覚えていなくて当たり障りのないコメントをしている選手に対して「ジョンはビルドアップの際にボールを前進させて相手を引きつけているにも関わらず、何度もそこでボールを失っていたよね。なんでだったっけ?」と仕掛けることができます。
この瞬間本人の中にもスイッチが入ります。内容は決してサッカーの専門分野だけ及びません。自身の学びに対する責任、逆境に立たされた時のメンタリティ、仲間に対する愛、リスペクト、感情のコントロールといったテーマも選手達が取り組む課題の中に含まれます。
ミーティングではこういった様々な分野における個人の課題を皆で共有していきます。全員のケースについて深く話す時間はありません。ある程度の時間を見切ってその日のトレーニングの紹介に話題を移ります。
そしては大事なことはトレーニングの説明だけで終わらないということ。各々はそれぞれ抱える課題と練習メニューをリンクさせた上でトレーニングに向かうことが求められます。
そうすることで具体的な課題を持ってそれぞれのメニューに取り組むことができるからです。これらが明確になればトレーニングの準備の完了です。
まとめ
・トレーニングの準備は試合直後から始まっている
・試合での課題について選手自身で考える時間を設ける
・週初めのトレーニングの前にもミーティングを開き試合について思い出させる
・選手主体の話し合いの中で1人1人の課題を全員で共有する
・その後にトレーニング紹介をして自分の課題と結びつけられるように導く