目指すべき指導者像~グッドコーチに向けた7つの提言~

いい指導者とはどのような指導者なのでしょうか?

今回は日本におけるスポーツ教育をより良いものに変容させることを目的としたNPO団体スポーツコーチング・イニシアチブ代表の小林さんに「いい指導者」についてお聞きしました。

選手とコーチの望ましい関わり方は?

選手がスポーツを始める時に、その動機は様々です。そのスポーツが好きで始める、友達が入るから、親に勧められて等、多種多様な理由を持ってスポーツを始め、それぞれが異なる目標を持っています。

コーチの役割を、選手の目標達成のために支援をしていく存在と捉えた時、異なる個々の目標に対して支援を行うためには、コーチには様々なスキルや引き出しが求められます。

自身も中学ラグビーの指導を行う中で、競技レベルを上げるための練習・試合のコーチング、またスポーツで学ぶことの出来る大切な価値感をどう育むか、幾度も悩みにぶつかり、その中で方策を模索しています。広くとらえれば、どのような指導者になればいいのかというのを常に模索している、とも言えるでしょう。

同じような悩みをアマチュアコーチのみなさんも抱えているのではないでしょうか?そんな指導者の悩みに答えてくれる「グッドコーチング」の在り方が文部科学省により定められているので紹介したいと思います。

グッドコーチングとは?

グッドコーチングとは、「新しい時代にふさわしいコーチング」について、「競技者やスポーツそのものの未来に責任を負う社会的な活動」と文部科学省のとりまとめた報告書で述べられているものです。
具体的には、

1.暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くしましょう。

暴力やハラスメントを行使するコーチングからは、グッドプレーヤーは決し て生まれないことを深く自覚するとともに、コーチング技術やスポーツ医・科 学に立脚したスポーツ指導を実践することを決意し、スポーツの現場における 暴力やあらゆるハラスメントの根絶に全力を尽くすことが必要です。

2.自らの「人間力」を高めましょう。

コーチングが社会的活動であることを常に自覚し、自己をコントロールしな がらプレーヤーの成長をサポートするため、グッドコーチに求められるリーダ ーシップ、コミュニケーションスキル、論理的思考力、規範意識、忍耐力、克 己心等の「人間力」を高めることが必要です。

3.常に学び続けましょう。

自らの経験だけに基づいたコーチングから脱却し、国内外のスポーツを取り 巻く環境に対応した効果的なコーチングを実践するため、最新の指導内容や指 導法の習得に努め、競技横断的な知識・技能や、例えば、国際コーチング・エ クセレンス評議会(ICCE)等におけるコーチングの国際的な情報を収集し、常 に学び続けることが必要です。

4.プレーヤーのことを最優先に考えましょう。

プレーヤーの人格及びニーズや資質を尊重し、相互の信頼関係を築き、常に 効果的なコミュニケーションにより、スポーツの価値や目的、トレーニング効 果等についての共通認識の下、公平なコーチングを行うことが必要です。

5.自立したプレーヤーを育てましょう。

スポーツは、プレーヤーが年齢、性別、障害の有無に関わらず、その適性及 び健康状態に応じて、安全に自主的かつ自律的に実践するものであることを自覚し、自ら考え、自ら工夫する、自立したプレーヤーとして育成することが必要です。

6.社会に開かれたコーチングに努めましょう。

コーチング環境を改善・充実するため、プレーヤーを取り巻くコーチ、家族、 マネジャー、トレーナー、医師、教員等の様々な関係者(アントラージュ)と 課題を共有し、社会に開かれたコーチングを行うことが必要です。

7.コーチの社会的信頼を高めましょう。

新しい時代にふさわしい、正しいコーチングを実践することを通して、スポ ーツそのものの価値やインテグリティ(高潔性)を高めるとともに、スポーツ を通じて社会に貢献する人材を継続して育成・輩出することにより、コーチの 社会的な信頼を高めることが必要です。

上記7つから形成される指導者の姿です。

どのように「グッドコーチ」になるか?

指導者としてのより高みを目指すために、その方法は様々あると思いますが、大切なことは選手、保護者、仲間の指導者などから「客観的なフィードバック(コメント)」をもらうことであると考えます。

自分は良い指導を出来ているか、ということを自分では気づくことが出来ない場合、他人から積極的に自分の指導についての指導をもらう機会が大切です。その際の指標としては
国際コーチングエクセレンス評議会(International Council for Coaching Excellence)があげる、
①指導者の価値感
②専門的知識(種目に特異的な内容や関係する内容とそれをどう教えるか)
③対自己の知識(自己認識と省察)
④対他者の知識(他者との関わり)
があげられます。

(ICCEより抜粋)

仲間の指導者がいれば、「今日の選手に対しての自分のコメント、どうだった?」と聞いたり、時には選手にゆだねる姿勢も重要です。

指導者としてのスタンス(姿勢)を確立し、グッドコーチとしてより高次の目標に向かわせる指導をするために、指導者は常に学び続けることが大切であると強く思います。そんな指導者が競技に関係なく日本全国に広まることを願っています。
グッドコーチを目指して、自身もこれから励み続けたいです。

参考文献
1. 文部科学省(2013)スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)報告書. http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/03/__icsFiles/
afieldfile/2015/03/13/1355873_1.pdf
2. 日本コーチング学会編(2017)『コーチング学への招待』大修館書店.
(参照 2017年5月1日)
3. International Council for Coaching Excellence, Association of Summer Olympic International Federations, and Leeds Metropolitan University.(2013)International Sports Coaching Framework(Version1.2).Human Kinetics.

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