サッカーは目まぐるしく状況が入れ替わるスポーツです。
その中でピッチに立った選手達は、状況に応じて判断を下さなければなりません。
よって、ジュニアサッカーの練習メニューでも「判断」は必要不可欠な要素となって来ます。
特にジュニアサッカーの指導者の方の「どのようなことを意識させれば判断できるようになるのか」「判断の前にボールコントロールができず顔が上がらない」というような悩みを解決していけたらと思います
認知判断実行のプロセスの理解
サッカーの構成する要素が「知覚認知」→「判断」→「実行」であることは、ご存知の方も多いと思います。
要するに観て、判断して、プレーするということですよね。
今回は「判断」の要素を取り入れる練習メニューを考えるわけですから、この一連のプロセスは頭に入れておく必要があります。
このプロセスが正常に作用していると「ミス」は無くなるというということです。
例えば、ボールを持って、顔を上げ見る事ができていないのに、良い判断することはできませんよね。
「知覚認知」を構成する要素は、「観る」だけではなく、聴いたり、感じることも挙げられますが、状況を正しく認識するためには、「観る」事は不可欠です。
判断の伴う練習メニューを作成する際は、「観る」という要素を組み込む事がポイントになります。
ジュニアのサッカー練習の中で、子どもに判断させたい時に、「考えろ」と伝えるだけでは判断のできる選手には育ちません。
まずは、いつ観ていて、何を観ていたのか問いかけてあげましょう。
サッカーから逆算して考える
ここでは「良い判断」について、掘り下げてみます。
良い判断をするためには、サッカーの構造を理解しておく必要があります。
今回はジュニアサッカーが対象ですから、サッカーで最も大切な要素「ゴールを奪う」「ゴールを守る」事は頭に入れてプレーしてもらいます。
レベルが上がると、「時間帯」「相手の戦術」「シーズンのどの時期か」「自分のコンディション」等考慮すべき要素が増えてきます。
「攻撃」を例に出してみましょう。
攻撃の最大の目的はゴールを奪う事ですよね。
なのでゴールを奪えるチャンスがあるのなら逃さないべきです。
ゴールを奪えそうになければ、できるだけボールをゴールに近づける事、すなわち、「前進」すべきです。
ボールを前に運ぶのが難しい場合はボールを失わない事を考えましょう。
ボールを「保持」するという事です。
簡単にまとめると、「フィニッシュ」→「前進」→「保持」という順に判断の優先順位が決まります。
優先順位が決まると、まず観るべき場所も決まってきます。
つまり、「良い判断」とは、この一連の流れからいかに最良の選択ができているか、ということになります。
よって、練習メニューに「攻撃方向」や「ゴール」を用いる事は、良い判断をするために大切だという事がわかると思います。
ボールを扱えなくても判断はできる
そもそも、ボールが扱えなかったら、判断できないんじゃないか?という疑問が出てくるかと思います。
例えば、ジュニアのサッカーでボール回しのポゼッションを練習メニューに組み込むとします。
練習をしているとパスがすぐ引っかかったり、トラップミスばかりで練習にならないこともありますよね。
なので、いわゆる基礎練などドリル練習を取り入れるのは理解できます。
ただそればかりだと、いつまでたっても判断できませんし、ボランティアチームなど、限られた練習時間や環境の中では、目的を達成するのが困難になってしまいます。
「判断させる」事が目的ですよね。
足が難しいなら、手でプレーさせましょう。
ハンドパスなら「ボールをコントロールする」というストレスが減り、判断する事が容易になります。
たしかにサッカーとはかけ離れていますが、観て、判断して、プレーするという一連のプロセスは練習メニューの中で体感できます。
どのタイミングでボールを離すのか、どこでボールを受けるかといった事も学ぶ事ができます。
他にも例えば、単純なドリブルの練習も一工夫加えるだけで判断の要素が出てきます。
限られた練習時間の中で、効率よく練習メニューを組むためにも一つのアイディアとして、ドリル形式に判断できる要素を加える方法も知っておいた方がいいですね。
下の図のように②の選手のドリブルであれば、横からくる選手を見なければ衝突します。
これなら幼児でもできるかもしれません。
どのようにして判断材料を得るのか
判断するために、観る事は大切です。
観るにも様々な方法が存在します。
ここではボールが来る前に観るという「観ておく」を主に紹介していきます。
ボールが来る前から状況をある程度把握しておけば、より良い判断につながります。
ここは高学年対象なので、低学年の参考にするのであれば読み飛ばしていただいて結構です。
まず、観るための一般的な方法は「首を振る事」です。
1番簡単な方法であり、ジュニアの年代の子ども達も理解しやすいと思います。
普段の練習から首を振って周りを観ることを意識させましょう。
シンプルなパス&コントロールの練習メニューの中でも意識させる事ができますよね。
次に、「バックステップ(クロスステップ)」です。
どういうことかというと、ボールから離れるという事です。
なんとなくイメージできるかと思いますが、離れてみることで、視野は広がりますよね。
下記図の通り、青①を認知できているのは赤②なのは一目瞭然です。
そして最後は「身体の向き」です。
こちらも図で理解いただいた方が早いです。
身体の前面を全てボールに向けてしまうと、視野が狭くなりますが、赤②のようにボールに対して身体を開くと、視野が広がります。
3対1などのいわゆる「鳥かご」形式の練習メニューの中で、身体の向きを意識させる事ができます。
このように、観るためにも様々な方法が存在します。
この事を知っているだけでも、「観る」事だけでもコーチングの幅が広がり、より具体的な指示を出せるようになります。
まとめ
①観る、判断、プレーのプロセスを理解
②サッカーから逆算して考える
③ボールはなくても判断できる
④どのようにして判断材料を得るのか
以上のことを頭に入れていただければ、練習メニュー作成にも役立ち、実際にその練習メニューを実行した際のコーチングにも役立てていただけると思います。
判断のできる素晴らしい選手育成に役立てていただけたら幸いです。