ユース年代からAリーグまで共通する、オーストラリアサッカーの一つの大きな問題はディフェンスレベルの低さにあります。
オーストラリアはイギリスの植民地だったこともあり、サッカースタイルもイングランドから影響を多く受けていました。そのため、球際の激しさが大きな特徴です。
(ここでは、2人の選手の間にあるボールを取り合うことを球際の争いとさせていただきます。)
球際の激しさといえば、ハリルホジッチ監督が日本の問題としてよく上げている点の一つですが、日本よりも球際は激しいと言われるオーストラリアでは、また別の問題があるように思います。
それは、球際の争いが多すぎることです。より具体的に言えば「体の入れ方」を知らないため、ディフェンスをしていてもボールを奪い返すことができないということです。
そこで、今回はサッカーのディフェンスにおいて非常に重要な技術である「体の入れ方」について考えてみたいと思います。
ボールとボールホルダーの間に体を入れる
小学校4年生の体育の授業中。
それが私が「体の入れ方」を学んだ瞬間でした。
クラスメートで、所属していたスポーツ少年団のサッカーチームのエースだった友達がドリブルをしているときに、自然とボールとその友達の間に体を入れて、ボールを奪い取ることができた感覚は、大袈裟ではなく本当に今でも覚えています。
それ以来、足も早くなく、サッカーもうまくなく、市の選抜などにも一度も選ばれたことなどない私が、どんな相手にも1対1のディフェンスでは勝てるようになりました。
この「ボールとボールホルダーの間に体を入れる」行為がサッカーで一般的に言われる「体を入れる」ということになります。そうすることにより、ボールを奪った後に、相手にすぐさまボールを奪い返されるということを防ぐことができます。
ディフェンスの目的はボールの所有権を奪い返すこと
体を入れることができないとどうなるのでしょうか。
例えば、ドリブルしてくる相手に抜かれないように、バックステップをしながら距離を取っています。そして、相手がボールを強く蹴りすぎて、身体からボールが少しだけ離れ、ボールを奪うチャンスが訪れました。そこで、足を伸ばすとボールを蹴り出すことができますが、それではボールの所有権を完全に奪い取ることができません。
また、こぼれ球が目の前に転がってきたとしましょう。しかし、相手選手もそのこぼれ球を目掛け走って来ており、近い距離にいます。
そこで、すぐさま足を伸ばし、ボールをコントロールすれば相手がすぐにボール目掛けてタックルしてきて、またボールを失ってしまう恐れがあります。
どちらのシチュエーションでも、相手より先にボールに触れるチャンスで、「ボールを触る」のではなく「ボールと相手選手の間に自分の身体を入れる」ことをしていれば、ボールの所有権を完全に奪い返すことができ、そこからボールをキープしつつ味方のサポートを待つ、もしくは相手をかわすことができます。
この2つのシチュエーションはサッカーの試合中に何十回と起こります。
そこでボールの所有権を奪い返せるのと、そうでないのとでは試合展開に非常に大きな影響を与えます。
またディフェンスの目的について思い出してみましょう。
基本的にサッカーは相手より多くの「点を取る」スポーツです。点を取るためには、まずボールを保持していなければいけません。そのために
相手からボールの所有権を奪うというのがディフェンスの目的です。
その目的を達成するためには、「体を入れるディフェンス」は必須です。
サッカーのディフェンスのおける体の入れ方
体を入れるディフェンスをするには、その名の通り「ボールと相手の間に体を入れる」ことです。
「体を入れる」というと、上半身、主に肩から先にボールと相手の間に入っていこうとしてしまう選手が多くいます。
サッカーは脚でボールを扱うスポーツのため、いくら上半身でコースを塞いでも脚が届けば触れてしまいますし、自分自身のバランスが崩れてしまい、結局相手の方が素早く動けボールを奪われてしまいます。
ここで重要になるのは腰から動くことです。腰から動くと自然と体全体がついてくるのでバランスを崩さず、スムーズに体を入れることができます。
ディフェンスのイメージを変える
そして、体を入れるディフェンスを習得するために一番大切になるのはボールの奪い方のイメージを変えることです。
体を入れるディフェンスができない選手は、「ボールを相手より先に触れるタイミング」を待ちます。
しかし、体を入れることできる選手は、「ボールを相手より先に触れるタイミング」ではなく、「相手選手とボールの間に体を入れるタイミング」を待ちます。
これだけ聞くと、当たり前のことを言ってるように思うかもしれませんが、この2つのパターンでは、相手との距離感や姿勢、ボールを奪いに行くタイミングなどが全く異なります。
感覚を身につけるための練習
体を入れ方というのは動作だけ見れば単純ですが、距離感やタイミングなどは選手により異なるため、何度もチャレンジして感覚を掴むしかありません。
そのためには数多くの1対1を経験するしかありません。
実際、去年のチームでは1対1を多く行い、その練習中は常に「脚を伸ばさないでボール奪う」ということを言い続けました。
相手の選手が持っているボールに触るたびにコーチや保護者から「ナイスディフェンス」といった声がかけられてきた選手にとっては、ディフェンスの仕方を変えるというのは簡単ではありません。
しかし、この技術は試合中に何度となく必要となるものですので試合に影響が非常に大きいので、なるべく早いうちに習得することが望ましいでしょう。